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グローバルな視点を身に着ける

読んだ本、雑誌、論文や観た映像作品の覚書き

シリア難民に関する5つの誤解

表題は3/22付けの Foreign Affairs の記事のタイトルです。

www.foreignaffairs.com

 

◆この記事の要約

筆者を含む7人の研究者グループは2015年と2016年の夏の2回にわたり、130人のシリア難民にインタビューを行った。場所はバルカンルートの国々のボーダーチェックポイントや難民キャンプ、都市部。密航船が出発する海岸(トルコやヨルダン)。そして難民の最終目的地の国々(ドイツとベルギー)。筆者は件の難民危機に関する議論や政策が不十分な情報や思い込みに基づいて行われている現状に危機感を抱き、一連の調査を行いこの記事を書いた。そこでシリア難民に関する議論の俎上に上る5つの間違いを発見した。

 

1. シリア難民はアサド政権「だけ」から逃げてきているわけではない

→欧米メディアではアサド政権が難民を発生させた一番の理由、と語られている。しかし、彼らからすればアサド政権はISや反政府勢力など戦闘を行っているワンノブゼムでしかなく、全員が恐ろしい。

2. シリア難民がEU諸国に入るのは容易である

→国境のフェンスやら地中海の沿岸警備やらを強化しても、抜け穴はたくさんある。

(記事中では背丈がたかいトウモロコシ畑を通り抜けた方のお話が出ていました)

3. 密航業者に感謝しているシリア難民は少なくない

→インタビューを行った4分の3の難民が密航業者に良い感情を抱いている。むしろ国境警備隊や兵士のほうが難民に対して暴力を働いたりする。

4. 密航業者を壊滅させてもシリア難民の助けにならない

→いたちごっこなので潰しても潰しても湧いて出てくる。むしろ、一時的に業者の数が減ることによって、密航料が値上がりすることもある。

5. 難民の社会統合が困難なのは文化の違いが原因ではない

文明の衝突をほとんどのムスリムは望んでいない。彼らが不満を抱いているのはホスト国政府や国際組織が自分たちに十分な支援をしてくれないことに対して。むしろ、シリアの周辺諸国にいたときのほうが、当該国の兵士や住民たちから差別的な扱いを受けてきた。

 

 

と、こんな感じの内容です(詳しく知りたい方はぜひ本文を読んでください)。

記事の最後にはこのグループからの政策提言が書かれていましたが、特段目新しい内容ではなかったので省きました。

 

筆者も記事中で言及されているように、サンプル数が少ないのでインタビュー内容をシリア難民一般の意見として受け入れるのは躊躇しないといけないと思います。

しかし、欧米(や恐らく日本の)メディア上で語られる難民発生の原因論や国境警備の有効性、密航業者への対策などが難民側の視点から見たらずれている可能性がある。つまり当事者の声を拾う必要がある。

この点を改めて意識させてくれた記事でした。

頭の片隅においておこう。

アメリカ合衆国の難民政策ざっくり理解の記事

第45代アメリカ大統領ドナルド・トランプ氏の7カ国からの移民・難民入国制限への大統領が1月27日に出され*1、政界はもちろん、経済界からも非難が上がりまくっています*2。これに対してワシントン州ミネソタ州の両政府が同大統領令の違法性を連邦地裁に訴え、2月3日、裁判所は大統領令の一時差し止めを認めました*3。これに対してトランプ政権側は連邦高裁に上訴し、6日午後(日本時間の7日午前)に結果が出るとのことです(本記事執筆時点で14時過ぎなのですが、まだ情報は入ってきません)。

 

少し話が本筋からそれましたが、トランプ大統領になってから改めて国家の安全保障の文脈でアメリカによる移民や難民の受け入れについて議論されています。

日本も難民の受け入れは目も当てられない数字なのでトランプ大統領を批判できる立場なのか?みたいな記事もどこかの新聞で読んだ気がします(ソースを保存し忘れました、すみません)。

 

では、議論の土台となるアメリカ合衆国の移民・難民政策に関して詳しく知っている人?

と質問されて、ハイ!と勢いよく答えられる人はいるでしょうか?

学者か人権団体にいる方を除き、ほとんどの人が No だと思います。

 

私自身、同国の難民政策について

・大統領が年初に受け入れ予定数を提示

・それを実行するには議会の承認が必要

・何か深刻な人道危機があるとアドホックな対応は行ってきた(オバマ大統領はシリア難民受け入れ枠を、特別に設けた)

くらいしか知りませんでした。

 

日本語の文献を探してもいいものはありません。

せっかく議論できるチャンスなのに、、、と歯噛みしていてたまたま見つけたのが以下の記事です。

www.cfr.org

 

記事のソースはCouncil on Foreign Relations (外交問題評議会)。

あまりにも有名なので説明は不要かと思います。

 

本記事ではアメリカ合衆国の難民政策の歴史、基本的方針、実際の流れ、かかわっている省庁とその役割まで、バランスよく書かれています。

言及される年号や省庁名にもリンクが張ってあり、ソースの信頼性もあります。

使われている単語もまったく難しくなく、分量も適切(私は10分弱かかりました)。

 

あくまで議論するためだったり、一連のニュースを理解するための基礎知識として、本記事に目を通しておいても 損はないです。

アイ・イン・ザ・スカイ 観てきました

本作品の見どころは3つです。(個人的に重要だと思ったポイント順に)

  1. ドローン攻撃における法的、政治的、軍事的判断のせめぎあい
  2. ドローン操縦者の葛藤(心理的描写)
  3. 観る側の価値観をも問われる1人の犠牲か80人の犠牲かの思考実験

 

本作品のあらましは

ソマリアとナイジェリアで自爆テロや銃乱射事件などを起こし、市民を殺しまくってるアル・シャハブってテロリストグループのリクルーター二人を、米英軍が手を組んでドローンを使って殺す」って感じです。

米英軍が協力と書きましたが、指揮を執っているのは英軍の大佐。

実行部隊は米軍です。

 

詳しくは公式サイトからどうぞ。

 

1が個人的には一番面白いポイントでした。

せめぎあいが発生した状況は、上述のテロ組織のリクルーター二人を殺害する場面です。(以下、思い出せる範囲で当時の状況を書きます)

 

二人を殺すだけならば問題なかった。

しかし、タイミング悪くこいつらがいるアジトのすぐそばで女の子がパンを売り始めてしまいます。

すると、こいつらを殺すためにドローンが発射するミサイル(ヘルファイア)の爆風が女の子を巻き込むかもしれない。

いわゆる付随的損害(Collateral Damage=CD)です。

 

無辜の市民を巻き込んでいいのか!ということで、ドローンの操縦士は攻撃を拒否。

しかし、現場指揮官は今を逃せばテロの連鎖は続くんだぞ!この少女一人と今後の数百、数千の命を救うことのどちらが重要なのか!!と功利主義的な持論を展開し、攻撃を指示。

彼女はその場にいた法務官(攻撃が人道法と今回の作戦の基準に照らして合法なのか否かを判断する人)を無理やり納得させ、更にCDを出す隊員にもCDE(Collateral Damage Estimates)を無理やり低い数値を出させてしまいます(本当は65~75%の確率で少女は死ぬとの計算を、45%にしてしまう)。

 

この2つの証拠を持って指揮官は本作戦の軍服トップの中将に連絡。

その中将は本作戦における攻撃の最終決定権を持つ法務大臣に攻撃を促す。

しかし、法務大臣も迷いに迷って決断できない。

 

彼が決断できない理由は2つ。

1つはCDで少女を巻き込んで死んでしまったら自分にとってまずい。

周知のことですが、米軍がグアンタナモ収容所やアルグレイブ刑務所で捕虜に拷問を行っていたことが発覚し、世界中から非難を浴びました。

本作戦のドローン攻撃で少女が死に、もしもその映像がYoutubeなどにあがったら、法務大臣の首は飛び、実刑をくらう可能性もある。

 

2つ目はテロリストがそれぞれ米国籍と英国籍を持っているということ。

もし、これが明るみに出れば、自国民殺しとレッテルを張られ、自分の政治生命が終わってしまうのではないのか、ということ。

それに米国民を殺すのは政治的にもまずくないのかと。

 

その場に国務長官は2つ目の点に関し、”もし、テロリストが自爆テロを起こし、数十人を殺せば我々の攻撃の正当性は絶対化される。しかし、我々の攻撃で少女が死ねば非難は免れない。政治的正当性の初期値が違う。だから攻撃はやつらがテロを起こしてからにしよう”という感じのセリフを言います。

 

更に副大臣はカント主義者で、”人の命を天秤にかけて、どちらかを選ぶ?それは道徳的に許されるわけない”と断固反対します。

 

ただ、最終的には

1つ目の点に関しては、ドローン映像の漏えい可能性が皆無に等しいことを中将が説き、クリア。

2つ目の点に関しても、外務大臣を通じてホワイトハウスに連絡。さっさとやってしまえ!と強烈なGoサインをもらい解決。

 オールクリアになりました。

 

ここにきて国務長官は賛成を表明。

しかし、副大臣はなおも反対を指示。

 

そこで中将が彼女に対して言います。

”この攻撃は法的にはクリアしている。政治的には(さっさと攻撃しないと今後の米英関係がどうなるか知らんぞ!とアメリカに脅されたので)待てない。そして、軍事的には(もちろん)待つ必要がない”と。

 

この言葉を受け、法務大臣はGoサインを出し、攻撃が実施される。

そして少女は、、、

 

という感じです。

この中の国務長官の政治的正当性の初期値の指摘はなるほど!と思いました。

 テロリストによるテロ攻撃の正当性の根拠は、キリスト教により歪められた世界に対するジハード、なわけですからそもそもマイナスからスタートしている。上りはすれど下がりはしない、ということです。

 

しかし、国家はそうはいかない。国際法を順守しなければならなず、ちょっとで逸脱行為が起こるとたちまちに非難される。しかも、それがテロリストの正当性を高める可能性もある。

 

だから、まずはテロリストに攻撃させて、しっかりと正当性を確保しないと攻撃できない、というわけです。

 

 

本作を観てから少し間が空いたので細かい描写は忘れてしまいましたが、大きな流れはこんな感じです。

 

これが(本ブログの目的を書いた記事を除けば)記念すべき一記事目になります。

慣れていないので文章の内容や構成の雑さが目立ちますが、これから頑張って成長します。1年後、この文章を見返した時に、どれだけ成長したのかを実感できているのか楽しみです。